文法の授業で耳にする言葉に、「一人称」「二人称」「三人称」があります。なんとなく分かっていても、意味や使い方を説明しようとすると言葉に詰まってしまう、そんな文法用語ですよね。ここでの文法用語「◯人称」は、「1人、2人、3人...」と、人数を表しているわけではありません!そこで今回は、この「人称」の意味と使い方を探っていきたいと思います。

英語の人称とは?

「一人称」「二人称」「三人称」は、前述のように、人数を数える方法ではありません。人称というのは、「動作の主体や対象が誰なのか」を区別するための概念で、話し手と聞き手がどのような関係性にあるかによって3種類に整理できます。

誰について話しているか? 話に必要な人
一⁠⁠⁠人⁠⁠⁠称 話し手は自分自身、あるいは自分を含むグループについて話している。 1. 話し手
二⁠⁠⁠人⁠⁠⁠称 話し手は聞き手に向かって話しかけており、かつ、聞き手について話している。 1. 話し手
2. 1名以上の聞き手
三⁠⁠⁠人⁠⁠⁠称 話し手が聞き手に向かって、第三者(話し手でも聞き手でもない人や物)について話している。 1. 話し手
2. 1名以上の聞き手
3. 話し手が指す人または物

人称代名詞は、この3種類の人称を表すために形が変わります。たとえば主格(英語で主語にあたる場合)であれば、人称別に、単数か複数かの違いで以下のように変化します。

単数形 複数形
一人称 I we
二人称 you you
(you all, y'all, ye, yinz, you guys)
三人称 he
she
it
they

人称を意識する必要があるのは、どんな場合ですか?

言語によって多少の違いはありますが、大半の言語には人称によって形が変化する単語があります。

したがって学習者の多くは、人称代名詞や動詞の活用を学習する段階で、人称という概念に向き合うことになるでしょう。

たとえば人称代名詞は、人称によって形が変化する代名詞です。この形の変化は、代名詞が持つ文中での役割(主語目的語など)によっても起こることがあります。

スペイン語やフランス語などのロマンス語派、英語やドイツ語などのゲルマン語派、ウクライナ語やロシア語などのスラブ語派を含む多くの言語では、主語の人称に従って動詞の形も変化します。つまり、主語が一人称か二人称か三人称か、そして単数か複数かによって、動詞の語尾が変化するのです。

これらの言語の学習では、上記の英語の代名詞表と同じように、動詞の語尾を人称ごとに整理した動詞活用表もよく使われます。たとえばドイツ語の動詞 「sprechen(話す)」の動詞の現在形活用を表にすると、以下のようになります。

単数 複数
一⁠人⁠称 spreche (私は話す) sprechen (私たちは話す)
二⁠人⁠称 sprichst (あなたは話す) sprecht (あなたたちは話す)
三⁠人⁠称 spricht (彼/彼女/それは話す) sprechen (彼らは話す)

日本語の一人称、二人称、三人称

外国語を学習するみなさんは、「◯人称」を文法用語として聞き慣れているかもしれません。しかし私たちは、母語でもすでに、一人称、二人称、三人称の視点を日常的に使いわけています。

もちろん日本語にも、一人称、二人称、三人称は存在します。以下の表で、英語の人称との違いを確認してみてください。

英語 日本語
一人称 I, me, mine, myself 私(は/が/を/に/へ)
二人称 you, yours, yourself あなた(は/が/を/に/へ)
三人称 he, him, his, himself
she, her, hers, herself
彼(は/が/を/に/へ)
彼女(は/が/を/に/へ)

人称を理解して、学習内容を整理しよう

一人称、二人称、三人称を3種類の「話し手と聞き手の関係性」ととらえ、表で整理することで、学習内容がより理解しやすくなります。今後の学習をスムーズに進めるためにも、英語での人称という視点を、今のうちにしっかり身に着けておきましょう!