つま先をぶつけたときに思わず出る声「アイタッ!」は、好きで出しているわけではないのでコントロール不可能、と思っている人もいるかもしれません。しかし実際には、痛みをどう表現するかは言語に影響されています!

今回のブログでは、世界各国の言語で「痛い!」というときに思わず出る言葉を取り上げ、その共通点と相違点を見ていきます。

「ITA(痛)い」を音として捉える

突然痛みを感じれば誰でも驚くもの。よって急に痛みに襲われた人の多くは、口をあんぐりと開けることになります。そのため多くの言語で「a(ア)」と「o(オ)」という開口母音(口を大きく開け、舌を口の中の低い位置に置いて発音する母音)が使われています。

また、この種の言葉の最後に「f」や「ch」のような摩擦音を使う言語も多くあります。摩擦音とは、口の中の空気の流れを部分的に抑えることによって発音される音で、たとえばうるさい人に対し「シッ!」というときの音がこれに相当します。この摩擦音は、気が動転したり、ショックを受けたりしているときにイライラや痛みを紛らわせる効果があるんです!

実のところ、世界中で興味深い音のパターンが見られるのは、痛みを表現する言葉だけではありません。動物の鳴き声もまた、言語が自然の音を創造的に真似ている一例です。

世界の「痛い!」

痛みの瞬間に思わずどのような声が出るかについては、世界的な共通点もあれば、語族によって傾向が違ったりもします。たとえば同じゲルマン語族の英語とドイツ語を比べると、「ouch(英語)」と「auth(ドイツ語)」でかなりの類似度です。

ラテン語から発展したロマンス諸語であるスペイン語、フランス語、ポルトガル語ではいずれも「ai」、そしてスラブ系言語のロシア語とウクライナ語でも「ai」です(ただしこれは国際音声記号での表し方で、綴りはそれぞれの言語で多少異なります)。

言語 発音
アラビア語 「ai」「akh」など
ベンガル語 「ish」「uff」など
中国語(広東語) 「aiya」
中国語(標準語) 「tong」「teng」など
英語 「ouch」
フィンランド語 「auts」「auh」など
フランス語 「aïe」「ayoye(ケベック方言)」など
ドイツ語 「aua」「autsch」「auth」など
ギリシャ語 「ach」「och」「ouch」など
ヒンズー語 「aha」
ハンガリー語 「au」「jaj」など
インドネシア語 「aduh」
日本語 「itai(痛い)」「ita(痛っ)」「aita(アイタッ)」など
ポーランド語 「au」「auc」「aɬa」など
ポルトガル語 「ai」
ロシア語 「ai」
スペイン語 「ai」
タガログ語 「aray」
タイ語 「oi」
トルコ語 「ai」「ah」「off」など
ウクライナ語 「ai」

もちろん同じ言語でも、話す人や方言によって、表現にはさまざまなバリエーションがあります。これらの痛みを表す言葉の多くは、繰り返し使われて「itai-tai-tai(痛い痛い痛い)!」(こう叫びながら飛び跳ねて我慢しようとしている人を思い浮かべてください)のような音のループとなることもよくあります。

言語への興味があれば、転んでもタダでは起きない!

今度足をぶつけたら、学習中の言語で「痛っ!」と言えるかどうか、試してみるのも一興かもしれません!