英語圏の人は何かを「Sky blue(空のような青色)」とか「Green like the grass(芝生のような緑)」と表現することがあります。しかし、別の言語では空と芝生が同じ色としてみなされることを知っていますか?

実は、世の中に存在する何百万種類もの色合いをどのように分類するかは、私たちの言語や文化に依存しているのです。色の識別の仕方が言語によってどれだけ違うかを知ったら、きっと皆さんは驚くことでしょう。今回のブログでは、言語と色の関係について、具体例を挙げて紹介していきます!

そもそも色とは?

色とは、私たちの目に見える光の波長の違いです。光の波長が大きく異なれば、私たちの目にも、まったく異なる色が見えるのです!光の波長は何百万種類とありますが、私たちはそれらを1つ1つ言い表すことはできません。その代わりに、色を「赤」「オレンジ」「黄色」といったカテゴリーに分類し、それぞれのカテゴリーの中に一定の範囲内の異なる波長の光が含めています。さらに、「真紅」「ミカン色」「黄土色」のようなより詳しい用語を使って、微妙な色あいを説明することも可能です。

しかし、どの波長をどのカテゴリーに含めるかは、ある意味、見る人次第です。どこまでが赤でどこからがオレンジかを区別する普遍的な方法は存在しません。私たちは、生まれ育った文化の中で、色のカテゴリー分けの方法を学んでいるのです!

色を表す言葉はある程度世界共通

ある言語におけるもっとも基本的な色を表す言葉を「基本色彩語」と言います。この用語が指すのはもっとも基本的な分類方法による色のバリエーションであり、「深紅」のような微妙な色はこれに含まれません。ただし「基本的」であるにもかかわらず、言語によって基本色彩語の数は異なります!

英語には、「black(黒)」「white(白)」「red(赤)」「green(緑)」「yellow(黄)」「blue(青)」「brown(茶)」「orange(オレンジ)」「pink(ピンク)」「purple(紫)」「gray(グレー)」の11種類の基本色彩語があるとされています。しかし、すべての言語で11種類が存在するわけではなく、さらには英語でも昔から11種類あったわけではありません。このような基本的な色を表す単語がはるかに少ない言語もあれば、もっと多い言語もあります。

さまざまな言語や文化での基本色彩語を比較すると、どの言語にも少なくとも「暗い」または「黒い」を表す単語と、「明るい」または「白い」を表す単語の2つがあることがわかっています。また、ある言語が3つの基本色彩語を持っている場合、その単語は「黒(または『暗い』)」「白(または『明るい』)」「赤」となることがほとんどです。そして基本色彩語が4つある言語であれば、以上に加えて「黄」か「緑」を表す言葉(あるいは黄と緑の両方の波長を含む言葉)となります。このように見ていくと、基本色彩語の「おおまかな」バージョンから「細かく分かれた」バージョンまで、パターン化することが可能です。このパターンはほとんどの言語で共通ですが、時折、ここから多少外れるものも見受けられます!

基本色彩語のパターン。ある言語に2つの基本色彩語がある場合、それは「白(または『明るい』)」と「黒(または『暗い』)」になる。ある言語に3つの基本色彩語がある場合、3番目の色は「赤」となる。 4種類の基本色彩語がある場合、4番目の色は「黄」か「緑」となる。

つまり、茶色を表す単語がある言語なら、「黒(暗い)」「白(明るい)」「赤」「黄」「緑」「青」といった色彩語も存在する可能性が高いということです!

色の見え方は母語によって左右される?

ある言語に基本色彩語が2つしかないからといって、その言語の話者が2色しか見ていないわけではありません。たとえば、ある言語に「明るい」と「暗い」という基本的な色彩用語しかないとしても、その言語の話者は、赤色のものを見た時に「血のような色」と呼んだりします。

逆に英語では、基本色彩語が11個もあるにもかかわらず、黒、青、緑のような寒色系の色はしばしば「dark(暗い」と表現され、白、黄、赤のような暖色系の色には「light(明るい)」という言葉を使います。

また、2つの言語で基本色彩語の数も種類もまったく同じであるのにもかかわらず、色の捉え方に違いがあるというケースもあります。たとえば、中国語とスペイン語は色に関する語彙が非常に似ていますが、前者が赤みがかったオレンジ色を「赤」に分類するのに対し、後者ではこれを「オレンジ」とみなす、といったことが起こるのです。

基本色彩語の数は時と共に変わる

基本色彩語の種類と数は、時と共に変化することがよくあります。なぜなら、時代の流れによって文化が変わると、特定の色を言い表す必要が生じたりするからです。たとえば「ピンク」は英語でも比較的新しい基本色彩語で、花の名前に由来しています。

もちろん英語以外の言語でも同様です!古代の日本語では、基本色彩語は白、黒、赤、青の4つでした。

しかし何世紀にもわたって他の言語や文化と接触してきた結果、現代の日本語では、オレンジ、黄色、緑などの色彩語が加わり、語彙が大幅に増えています。

ちなみに昔の日本語では、「青」というカテゴリーに英語の「green(緑)」と「blue(青)」の両方を含めていました。今では「青」という言葉は、英語の「blue」により近い意味で使われるようになりましたが、英語話者が「green」とみなすものを「青」と表現するケースはまだまだあります。その良い例が「青信号」です!

真っ白なキャンバスを前に考え込むオスカーのイラスト。

基本色彩語が12個の言語も

英語よりも基本色彩語の数がさらに多い言語も存在します👀 英語話者や日本語話者が「同じ色だが色合いが微妙に異なる」と考える色を、他の言語では2つのまったく異なるカテゴリーとみなすこともあるのです!例をいくつか挙げてみましょう。

ロシア語
ロシア語には、英語の「blue」に相当する単語が2つあり、「Голубой (goluboy)」は水色、「синий (siniy)」は紺色を指します。

イタリア語
ロシア語と同様に、イタリア語にも「青」を表す2つの基本色彩語があります。いわゆる青色を表す「blu」と、より明るい色合いを表す「azzurro」です。

言語によっては、基本色彩語の数について意見が分かれるものもあります!以下の言語では、「基本色彩語は12語ある」と言う専門家もいれば、「基本色彩語は11個しかなく、12個目は『基本の』色彩を表す言葉ではない(特殊すぎるか、特定の文脈でしか使われない)」と言う母語話者や言語学者もいる、という状況となっています。

ハンガリー語
ハンガリー語には、英語話者が「赤」とひとくくりにする色彩に対し、「piros」と「vörös」という2つの色彩語が存在します。

トルコ語
トルコ語では濃い青には「lacivert」、薄い青には「mavi」という言葉が使われます。

色は言葉があるからこそ識別できる

私たちは何百万もの色を知覚できるにもかかわらず、世界中の言語や文化は、驚くほど似たような方法で色のスペクトルを分解する傾向があります。ちょっと不思議だと思いませんか?今度空を見上げたら、自然の美しさについてだけでなく「 空はなぜ『青い』?」という言葉のミステリーについてもぜひ考えてみてくださいね 🌈