Duolingoでの学習は楽しく、その効果も実証されていますが、みなさんが受けたことのある他の語学講座とはちょっと違うかもしれません。Duolingoの学習メソッドは最新の学習科学研究に基づいており、どんな目標を持つ人でも、学習した情報を確実に使いこなせるようにできています。習ったばかりの情報をすぐに実践で使えるようにするための工夫のひとつとして、Duolingoでは「暗黙的学習」を活用しています。今日はその概要についてご紹介しましょう。

暗黙的学習とは、経験、インタラクションおよび実践を通して行われる学習を指しています。暗黙的学習では、暗記やルールそのものに注目するのではなく、むしろそのルールを使って問題を解決し、間違いから学び、新しいパターンや情報に対する直感を養うことを狙いとしています。

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暗黙的学習は、学習していることにまったく気が付かずに起こることもあります。

暗黙的学習の逆の方法が「明示的学習」です。明示的学習は、ルールやものごとの仕組み、パターンについて直接的に教わることよって起こる学習を指します。

暗黙的学習と明示的学習の違いは、どちらか一方が良くてもう片方が悪いというものではありません。どちらの学習方法が目前の課題に適しているかは、その情報を使って何をしたいかによって決まります。また、特定の種類の情報については、ある学習方法が他の方法より適しているということもあります。

なお、何かを知っていることと、それを必要な場面で実際に使えることは、同じではありません。大人の学習者は、自分が学んでいる事柄の背景にあるルールを知りたがる傾向があり、それによって安心感を得ようとしがちです。しかし、新しいスキルを実践で「使う」ときには、明示的な情報がかえって邪魔になることがあります。(スペイン語の動詞を会話で使うたびに、活用表を暗唱する事態を想像してみてください!)

暗黙的学習と明示的学習の例

この2つの用語を聞いたことがなかったとしても、みなさんは間違いなく、両方の学習を行ったことがあると思います!

🌍 首都
世界中のすべての国の首都を覚えたい場合、暗記カードを作ったり、地図で勉強したり、語呂合わせをしたりして、明示的に記憶しようとするでしょう。

ただし、かつてパリを舞台にした本を読んだ、数年前にバックパックで南米を旅してリマやサンティアゴを訪れた、あるいはマニラに引っ越した友人がいる、などの経験がある場合はどうでしょうか?その場合、これらの都市がそれぞれフランス、ペルー、チリ、フィリピンの首都であることを自然に覚えているはずです。これが「経験を通じて、いくつかの首都については暗黙的に学習した」ということです。

🎵 2003年の大ヒット曲
「2003年のヒット曲トップ50」を全部歌えるようになりたいのであれば、まずインターネット検索で情報を収集してから、丸暗記したり、2000年代初頭のポップミュージックのトレンドを勉強したり、1日1曲ずつ50日間取り組んだりして明示的に覚えることも可能です。

しかし、2003年には至るところで「涙そうそう」が流れていたとか、お姉さんが持っていた「世界にひとつだけの花」のCDを黙って持ち出したとか、生まれて初めて行ったクラブで「In da Club」を聞いたとか、そのような経験を通じて2003年のヒット曲を暗黙的に覚えた人は、私たちの中にも多くいるはずです。

🤹 秘密の特技
仮にジャグリングのパフォーマンスで友達をあっと言わせたいとしましょう。ジャグリングの物理的メカニズムについて調べたり、入門書を読んだりして明示的に学ぶことも、できなくはありません。しかし実際にジャグリングをするには、とりあえず暗黙的な学習に飛び込んでみるのが得策ではないでしょうか!

新しく学んだジャグリング技術を活用したいのであれば、ジャグリングについての知識を更に深めるよりも、何らかの物体をとりあえず空中に放り投げてみるほうが、よほど役に立つことでしょう(たとえキャッチできなかったとしてもね!)。

Duolingoでの暗黙的学習

Duolingoのコースでは、学習者が学んだ情報を使いこなせるように、暗黙的な学習に力を入れています。そもそも言語学習の目的は、その言語で話したり音楽映画を楽しんだりすることのはずです。算数を学ぶ場合でも、他人に自慢するためではなく、実際の生活に役立てたいという方がほとんどでしょう。

そのためDuolingoのコースでは、学習者は、最初のレッスンからすぐに質問への回答を求められます。この実践第一のメソッドでは、学習者は、単語であろうと小数であろうと与えられた情報を認知し、また与えられた質問を理解して、そこから答えを導かなければなりません。そのために観察力を研ぎ澄ませ、パターンを探し、仮説を検証しながら言語を使い始めるようになります。またDuolingoでは、練習問題中の最も重要な情報に視線を誘導するような工夫を加えることによって、学習者がこれに気づき、記憶できるようにしています。なおこの種のアプローチは、学習者が間違えることを前提としており、間違いも学習プロセスの一部と考えます。まずどのようなルールが成り立つか考え抜き、それが間違えていたとしても改めてパターンの構成要素の一つひとつを見直すきっかけとなるため、次回のために仮説を改善することができるのです。

もっとも、明示的な指導が必要なこともあります。特に、何らかの情報に十分に触れたり、質問と解答の機会を設けたりするのが難しい場合、暗黙的学習と明示的学習の併用で学習効果が上がることは珍しくありません。また、明示的学習でルールやパターンを覚えることによって、最短距離で正しい仮説にたどり着くことができるというメリットもあります。しかし情報を「知る」ことと、それを「使えるようになる」ことは別物だということを忘れないでください。そのためDuolingoでは、明示的な情報はコースを補うものとして位置付け、セクション概要、ユニットガイドブック、このブログなどを通じて提供するようにしています。

脳が最も喜ぶ方法で学ぶ

本当に使える新しいスキルを身につけるには、暗黙的学習が近道です。だからこそDuolingoでは、はじめから新しい情報に体当たりすることをおすすめしています。さあ、最初のレッスンからどんどん新しいスキルを使っていきましょう!