複数の言語や方言を使うことは、脳にとってかなりのバランス感覚を必要とする、難しい技です。そのため、新しい言語を勉強するだけでも、十分な認知トレーニングになります!数か国語を操る人の脳がどのように働くかをごく分かりやすく説明すると、その時々で使っている言語の「脳内音量」を上げ、それ以外の言語の「音量」を下げるようなことを行っています。いろいろな言語がごちゃまぜにならず、1か国語ずつ使いわけることができるのは、そのためです。もっともバイリンガルは文章や会話の中で複数言語を混ぜて話すことがありますが、このとき脳内では、複数の言語の「音量」が同時に上がったままになっているのです!

バイリンガル(またはマルチリンガル)の脳で何が起こっているのか、これまでに分かっていることは以下の通りです。

各言語の「脳内音量」は、人によってまったく異なる

自分が習得している各言語の「脳内音量」がどれだけあるかは、基本的に、その言語を学んだ年齢、使用頻度、習熟度などによって変わります。

特定の言語の「音量」を下げるには、それなりに頭脳のエネルギーが必要

使い慣れた言語の「音量」を下げるには、最近習ったばかりの言語の「音量」を下げるよりも、多くの努力が必要となります。

苦手な言語から得意な言語に戻るのも、実は大変

あなたが日本語の話者で、英語を学んだとしましょう。あなたが英語で話している最中、脳は日本語が出てこないようにするためにかなりの努力をしています。そして、日本語に「戻ろうと」した場合、脳は、日本語抑制モードを「解除」するために、かなりの努力をしなければなりません!このようなわずかな遅れ(多くの場合、数百分の1秒以下)は、言語を切り替える際の「切り替えコスト」として知られています。

科学的には、バイリンガルに物の絵を見せてその名前を言ってもらい、その後に別の言語でもう一度物の名前を言い直すという実験を行い、言い直しにかかる時間を測定することによって、強い言語から弱い言語に(そして弱い言語から強い言語に)切り替える際の遅れについて、研究が進められています。

どの言語が強くてどの言語が弱いかは、話者や言語ペアによってまちまち

各言語の正確な「音量」と言語間の「切り替えコスト」は、各言語の経験がどれだけあるか、また使用する2つの言語がどれだけ似ているかによって決まります。例えば、同じ起源から各言語に枝分かれして出来た単語(例えば「家」は英語で「house」、スウェーデン語で「huis」であり、形がある程度似ています)どうしの場合、まったく形の違う単語同士よりも楽に素早く切り替えできる傾向があります。

各言語の「音量」は、時間の経過とともに変化する

人生のさまざまな局面で、特定の言語を使う頻度や環境が変わると、その言語の「音量」は大きくなったり小さくなったりします。10代までは毎日使っていた言語でも、外国の大学に進めば、使う機会が減って「音量」もだんだん小さくなっていくかもしれません。しかし、その音量が後でまた大きくなることもありえます!

私たちが大音量🔊で言いたいのは...

私たちの脳は実に柔軟で、多言語を操る能力を生まれながらに備えています。もちろん、新しい言語の「音量」を既に知っている言語のレベルまで上げるには時間がかかりますが、練習を重ねることによって、脳はその言語を確実に身につけます(これは研究によっても立証されています)!毎日少しずつ、あなたの大好きな言語の「音量」を上げていってくださいね!