どんな言語であろうと、伝えられない考えや感情はないというのは事実ですが、その一方で、ある言語に特有の、文化が色濃く反映された言葉も数多く存在します。そして、言葉を通じて文化を学ぶのは、とても楽しいものです!前回のブログ「仏語の歴史」に続き、今回の記事では、フランス人の世界観を知る手掛かりになる、興味深いフランス語の単語やフレーズをご紹介します。

では始めましょう!

Terroir[テロワール]

「terroir」とは土壌や農作物の生育環境を意味し、フランス語を勉強したことがない人でも、ワインボトルにブドウ畑の説明としてこの言葉が書かれているのを見たことがあるかもしれません。しかし、日本人が「土壌」という言葉を比喩的に使うことがあるように、フランス人もこの言葉を非常に広い意味で使います。「terroir」という言葉によって、その土地の食べ物や農産物だけでなく、それを構成する人々についても語ることができ、「terroir」とはいわば、土壌から人まで、その土地の特徴を形作るすべてをひっくるめたものと言えます。

Flâner[フラヌール]

フランスでは、おそらく米国や他の国以上に、さすらい歩くことを芸術的行為として捉える慣習があります。これは「flâner」と呼ばれており、目的地を定めずにぶらぶらと歩きながら、自分を取り巻く事物を観察し、世界や自分という存在について問いかけ、思案し、熟考することを意味します(もしかしたら、あなたもパンデミック・フラヌールになっていたかもしれませんね)。 目的もなく歩く、そして道を進むに従って姿を変える都市の風景に身をゆだねる。そこには単純な喜びがあり、時に、詩的ですらあります。

Baccalauréat[バカレロア]

フランスの学生は、他の国の学生よりも早く進路を決め(米国では、実際にカレッジに入るまで決まっていないこともあります)、選んだ分野の「baccalauréat(略してbacとも呼ばれます)」試験を受けます。この国家試験は高校卒業時に行われ、大学入学資格試験としての役割も果たします。こういった実用的な目的のほか、フランス人にとって「bac」は大人になるための通過儀礼としても意味もあり、口頭試験と筆記試験の準備に膨大な時間を費すことによって、討論や分析というフランス人ならではの精神が育つのです。これに合格すれば一人前、フランスの哲学者やニュースキャスターに対峙する準備ができたということです!

Ennui[アンニュイ]

フランス語「ennui(倦怠、退屈)」は17世紀に英語に取り込まれて定着し、英語の「annoy(困らせる、嫌な気分にさせる) 」という言葉とも遠縁の関係にあります。いずれの言語でも「ennui」は退屈感や周囲の状況に対する不満を表すのに使われますが、その解決方法はずいぶん違うようです。米国では行動を起こし、前に進み、成果を出すことで解決するのに対し、フランスでは芸術作品を楽しんだり、「flâner」に出かけたり、友人と話したりするのが何よりの薬です!

Voilà[ボワラ]

英語では 「and there it is」とか 「ta da!」に相当する、このフレーズを聞いたことはありますか?例えば「voilàって、バルバラ・プラヴィがユーロヴィジョン・ソング・コンテストで歌ったアレか!」と気づいたとき、会心の出来の芸術作品を披露するとき、息子のお気に入りのおもちゃをソファの下で見つけたときなど、ありとあらゆる事柄の強調のために使われています。言うならば「そういうことか!」「ご覧あれ」「見~つけた!」といったところ。フランス語であなたの最新の発見を披露したければ、万能ワード「voilà」で決まりです。

Bof[ボフ]

そして最後に、フランス語のあいまい表現を一つ。これは英語の「meh(さあね/別に)」と同様に、何かを否定するわけではないが大して関心がないことを示したり、また、何かを批判しつつもそれをぼかしたりするのにも使えます。例えば「この料理まずそう」とストレートに言えばカチンと来る人もいるかもしれませんが、そこで「bof」をつけ、さらりと「Bof, cette ratatouille n'a pas l'air très bonne. (うーん、このラタトゥイユ、いまひとつかもしれない)」と言えば、誰の感情も傷つけません 。ただし、肩をすくめながら言うのは忘れずに!

✨ je ne sais quoi (言葉にできない何か)✨を学ぼう

言葉には必ず、辞書や翻訳サイトに載っている以上のニュアンスがあるものです。言語学習には背景文化の理解が欠かせず、また、いろいろな言葉の裏に隠れた意味を理解するのは、とても楽しいことでもあります。学習中の言語があったら、ぜひその国の文化についてもアンテナを張り巡らせてみてくださいね!