言語は、常に社会のニーズに合わせて変化し、進化を続けています。例えば平安時代の文学『枕草子』の日本語は、現代の日本語とはかけ離れていますね。同じように、16~17世紀のシェイクスピアの著作も、私たちが知っている英語とはかなり異なる英語で書かれています。

英語が長い歴史の中でどのように変化してきたかについては、すでに広く知られていますが、100年後の英語はどうでしょうか?22世紀の英語話者は、どのような発音をし、どのような語彙や文法を使用しているのでしょうか?それを確実に知る方法は存在しませんが、これまでの変化と現在の傾向に基づいて、ある程度の予測を行うことはできます👀

今回は、今後100年間に英語に起こる可能性のある変化を5つ、予測してみました。

魔法使いのような紫色のとんがり帽子をかぶり、水晶玉をのぞいて将来を占っているデュオ

🔮予測その1:「Whom」がなくなり「Who」に統一

そもそも、なぜ「who」と「whom」の違いがあるのでしょうか?その起源は、英語の名詞に「」が存在していた時代にさかのぼります。名詞の格とは、名詞の文章中における文法的な役割を指します。現在の英語でも代名詞にその名残があり、「he/she」(主格)と「him/her」(目的格)の違いがその代表例です。しかし大部分の名詞では、何世紀も前に格は使われなくなりました。「whom」はかつて「who」に対し存在した、何種類もある格のうちの一つです。そして「whom」を「who」で代用する習慣は、実は700年も前からあったそうです。

今日では「whom」のかわりに「who」を使用する人は増加する一方で、その影響により、2100年代には「whom」が完全に消えてしまうだろうとも言われています。ちなみに古英語には「who」の対格(現在の直接目的語に相当)として「hwone」という言葉が存在しましたが、現代では使われていません。今後は「whom」も同様の運命をたどるでしょう。

🔮予測その2:「Drink」の過去分詞形「Drunk」が過去形「Drank」に飲み込まれる

英語の動詞には、3つの基本活用形があるのを聞いたことがあると思います。動詞「go(行く)」であれば、「go/went/gone」(現在形/過去形/過去分詞形)ですね。しかし、動詞の活用は永久に同じ形にとどまっているわけではありません。例として、今、岐路に立たされている動詞の一つに「drink」があります。

歴史的に「drink(飲む)」の過去分詞形は「drunk」であり、これには疑問の余地がありませんでした。しかし今では、過去分詞形を用いるべきときに「drunk」を使用せず、かわりに過去形の「drank」を使うことが増えてきています。「No, I've never drank at that bar before(いいえ、私はあのバーで飲んだことは一度もありません)」といった文章は、今では特に違和感なく受け止められています。

このような変化は英語の動詞にとって珍しいことではありません。「bake(焼く)」の過去形は昔「boke」だったのが今では「baked」となっているし、かと思えば「dive(もぐる)」の過去形は昔「dived」で今は「dove」になっている…という具合に、前例が数多くあります。「drunk」という言葉も、22世紀にはもはや使われなくなっていることでしょう。

🔮予測その3:「ing」から「g」が消える

「動詞のing形」(例:I am talking on the phone while walking to the store = 私は店に歩いて向かいながら電話をしている)も今、大きな変化を迎えています。そもそも「-ing」形は、古英語では「-ende」という形でしたが、まったく別の機能の語尾「-ing」とよく似ていたことから後に「-g」が付くようになり、その発音も同様に混同されるようになりました。また「-ing」の「n」と「g」は、別々に発音するのが長い間の習慣でしたが、そのうちに2つが組み合わさり、喉の奥で鳴らす「ng」の発音へと変化しました。それが今や「reading = readin' 」「going = goin’」のように、「g」の発音が再び消えようとしています。

「ng」音は次第に使われなくなる傾向にあり、22世紀には過去の遺物となっているでしょう。

🔮予測その4:方言のバラエティが豊かに

方言」と「別の言語」との境界は、言語学上の違いによってではなく、政治や力関係の都合から線引きされることが多くあります。そして2つの方言の違いが大きくなっていき、一方の話者がもう一方の話者の言うことを理解できないような事態になれば、それらが別の言語として扱われることも考えられます。

次の世紀には、英語の方言は目まぐるしい変化を遂げると予想されています。特に、英語が他の言語と共存している地域では新たな英語が進化しつつあり、一方、何世紀も前から存在する方言も、その独自性をますます強めていくかもしれません。すでに米国では、英国の人気テレビ番組を字幕付きで見ている人もいます。100年後には「英国語」と「米国語」が異なる言語として認知されている、という可能性も十分にあるでしょう。

🔮 予測その5:#昔の名前で呼ばないで

このマス形の数字記号「#」は、過去数十年間、電話機のボタンとして「シャープ」、または重さの表記では「ポンド記号」という名前で知られてきました。しかし、ソーシャルメディアによってこの地味な記号は新時代を迎え、「ハッシュタグ」という新しい名称が与えられました。当初はジョークのネタにされたこの名称も、ソーシャルメディアでの普及に伴い一般化し、今では電話よりもTikTokビデオで使われることのほうがはるかに多くなりました(現在「#」を電話で使用する機会は、カスタマーサービスの自動音声ガイダンスくらいではないでしょうか?)。次の世紀の英語話者からも「#」は「ハッシュタグ」と呼ばれ続け、この名称は完全に定着するでしょう。#言語の未来

未来の英語🤖

英語が(もちろん他の言語も)2100年代にどのような姿となっているかを確実に知ることはできません。しかし、今日私たちが目にしている言語の変遷は、近い将来にどのような変化が起こりうるかを垣間見せてくれます。結局のところ、この世のすべてものは絶えず変化しています。言葉も、留まることなく移り変わっていきます。