今日、「ケルト」という言葉からは、「アイルランドやスコットランド、ウェールズといった場所に住み、赤毛で緑の服を着て、聖パトリックの祝日に大騒ぎする人々」そんなイメージを思い浮かべるかもしれません。あるいは、お気に入りのスコットランドのサッカークラブや、ボストンのバスケットボールチームが、そうしたステレオタイプのイメージをさらに強めているのかもしれません。
しかし、あなたが「古代ケルト人はスペイン語にも大きな影響を残した」と聞いたら、きっと意外に思うに違いありません!今回のブログでは、古代ケルト人がスペイン語を通じて、自分たちの言葉を世界中に残したいきさつをご紹介しましょう。
すべての道はイベリア半島に通じる
もともと北西ヨーロッパに住んでいたケルト人は、何世紀もの間、ローマ帝国のラテン語を話す住民と接触していました。その結果、ラテン語(その方言の1つが後のスペイン語です)にはケルト語起源の単語がかなり多く含まれるようになりました。ケルト語には、アイルランド語、スコットランド・ゲール語、ウェールズ語が含まれており、これらはインド・ヨーロッパ語族という大きな語族の一部です。同じ語族の中に、ロマンス諸語(スペイン語やフランス語など)やゲルマン諸語(英語やドイツ語など)も含まれています。
ケルト人はローマ帝国の支配下でローマ人と共に生活し働いていたため、ケルト語のいくつかの単語は、現在のスペインにあたる地域で使われ、直接スペイン語に取り入れられました。これに加えて、ヨーロッパの他の国を介して遠回りした挙句にスペインに達し、スペイン語に定着した語彙もあります。
ケルト人は昔、ヨーロッパ中にいた
古代ローマ人は、ピレネー山脈の西に広がる広大なケルト人の領土の最西端の地域をイベリアと呼んでいました。これが、現代のスペインとポルトガルにあたります。ケルト人はイベリア半島の大部分に住んでいたと考えられており、西の大西洋岸から地中海を横断し、南はコルドバまで分布していました。
スペインの地名には、ベルドゥ(バルセロナ近郊)、セゴビア、カンタブリアなど、ケルト語に由来すると考えられているものが多く存在します。実際、スペイン北西部の自治州ガリシアの名称は、ローマ人が最初に到着したときにそこに住んでいたケルト人(Callaeci、またはGallaeci)にちなんで名付けられています。ガリシア州内には、セルティゴスやブレトニャ(ブリテンのケルト系住民の名前から来たと考えられています)といった町の名前があり、かつてそこに住んでいたケルト系部族の名残があちこちに残っています。
ケルト語は車に乗ってやってきた!?
スペイン語の語彙の中で、ケルトの人々に由来するものの一つが、「車」に関係する一連の単語です。「carro(車)」は、戦車や荷車を意味するケルト語の語に由来しており、英語の「cart(荷車)」を思い浮かべると分かりやすいでしょう。同様に、「carpintero(大工)」も同じ語源に由来しています。荷車は主に木で作られていたため、その意味は「車を作る人」から「木工職人」へと変化していったのです。
ケルト語の「車」と関係のあるスペイン語の単語は、ほかにもあります。たとえば 「cargar(積み込む)」は、木製の荷車に荷物を積む動作に由来し、「carril(車線/レーン)」も車がらみです。さらに、「carrera(キャリア)」でさえ、職業人生がある特定の道筋や軌道をたどる、という比喩から来ているのです。
生活に根差した語彙が多い
ラテン語(そしてそこから派生したスペイン語)は、ローマ帝国の権力と威信を背景に広まりました。そのため、スペイン語の洗練された文化的概念を表す語彙には、ケルト語起源のものは少なく、むしろ、ものづくりや職業、土地の耕作といった、牧歌的で日常的な活動に結びついた語にその影響が色濃く残っています。
- 日常の技術:camino(道)、mina(鉱山)
- 土地やその生物:álamo(ポプラの木)、conejo(ウサギ)、alondra(ヒバリ)
- 文化的な事物や習慣:bruja(魔女)、camisa(シャツ)、cerveza(ビール)
ビールを飲んでケルト語に思いをはせよう
このように、ケルト語とスペイン語のつながりは、実はとても深いのです。次の聖パトリックの祝日に誰かが緑の 「cerveza(ビール)」を注文しているのを見かけたら、アイルランドの人とスペインの人は、遠い言語的な「いとこ」なのだと思い出してくださいね。