「Duolingoへの質問」へようこそ。このコラムでは言語学習者へのアドバイスをご紹介します。過去の記事はこちらをご覧ください。

学習者の皆さん、こんにちは!今回の「Duolingoへの質問」は、チームワークでお届けします!担当するのは、ドイツ語のエキスパートであるKristina Schoen(過去に、ドイツ語の文法上の性所有代名詞に関する記事を執筆しました)と、Duolingoラーニング&カリキュラムマネージャーのRich Forestです。

Richにとっては、これが初めてのDuolingoブログへの投稿となります!Duolingoに入社する前には、米国、日本、香港の高等教育機関で第二言語としての英語を教えていました。

私たちはさまざまな言語の教育に関わってきましたが、今日はちょっと毛色の変わったテーマとなります。とはいえそれは、私たちが大好きなものでもあります。それではいきましょう!

今週の質問

Duolingoに質問です。  ビデオゲームを使って語学学習をできたらいいなぁ、と考えているんですが。ビデオゲームは語学学習の教材に使えますか?そしてビデオゲームを使う場合、どうやったら効率的に学習できますか?  よろしくお願いします。 語学始めたよ!より

語学始めたよ!さん、ビデオゲームを使った語学学習について話す機会ができて、とっても嬉しいです😍回答をまとめるにあたっては、Duolingoの同僚でゲーマーでもあるKarl Channell(プリンシパルプロダクトデザイナー)とShawn Buessing(シニアエンジニアリングマネージャー)にも話を聞いてみました。

ビデオゲームを語学学習に役立てるというアイデアは、決して、単なる都合の良い思いつきなどではありません!ゲーマーがどのようにゲームを使って言語を学ぶかについては、CALL(コンピューター支援言語学習)やDGBLL(デジタル・ゲーム・ベース言語学習)といった研究分野がちゃんとあるんです。ということは、語学始めたよ!さんの質問の答えはもう出ているようなものですね。

ビデオゲームは語学学習に適している?

その通りです!ゲーマーはゲームで勝ち続けたいというモチベーションが高く、そのために他のプレイヤーと積極的に会話します(協力するため、情報収集のため、競い合うためなど、その動機は問いません)。結局のところ、私たち語学教師がいつも奨励していること、つまりコミュニケーションそのものを、進んでやっているのです!プレイヤーは、特定の目的を達成するため(例えば、タスクを理解する、危険を回避する、「龍が如く」でスマイルバーガーを注文するなど!)、集中した状態で情報を聞いたり、発言を行ったりします。ビデオゲームはバーチャルな環境であるため、現実世界で新しい言語を使ってみるときのような恥ずかしさを感じずに済み、また自分の好奇心や興味というフィルターを通して学習できます。そのため多くの学習者が、従来の学習方法よりも取り組みやすく、やる気も出ると感じています(このような利点については、ジェイン・マクゴニガル著の「Reality is Broken(邦訳:幸せな未来は「ゲーム」が創る)」に詳しく取り上げられています)。

学習中の言語でゲームをすることによるメリットは色々ありますが、元々ゲーマーは、語学学習に役立つスキルを既に習得している事も多いのです。例えば、

  • ゲーマーは沢山の情報を統合するのが上手。教育者はこのスキルを「マルチリテラシー(多種多様な情報を収集し、評価する能力が高いこと)」と呼んでいます。ゲーマーは、さまざまな事柄や情報源をどのように取捨選択して行けば「強く」なれるかを学んできています!
  • ゲーマーはアイデンティを変えることに抵抗を感じない。プレイヤーは通常、普段の自分とは異なる性格を持ち、違った人生を歩むペルソナとなります。これは、新しい世界に飛び込み、新しい世界観で、その空間の住人のあり方を学ぶ機会に他なりません。そして語学学習も、これまでとは異なる人や文化との関わりの中で自分を見つめなおす機会となることがあります。
  • ゲーマーは技の組み合わせが得意。ゲーマーはより高度なレベルに進むにつれてさまざまなスキルを身に付けて行きますが、獲得済みのスキルの組み合わせが上手なほど「強いプレーヤー」となることができます。これは、状況に合わせて柔軟に戦略を変えられることや、既に持っているスキルを別の方法でも応用できることを意味し、まさに語学学習者が必要とする資質と同じです。
  • ゲーマーは情報の吸収が早い。ゲームまたはゲーム内の各レベルは、チュートリアル、つまり、失敗を恐れずにゲームの仕組みや操作を学ベるコンテンツから始まることがほとんどです。チュートリアルがゲームのストーリー自体に埋め込まれているものなら、プレイヤーは操作しながらすぐにコツを掴み、学んでいることすら意識しません!

語学学習者におすすめのビデオゲーム

新しい言語を練習するにあたり、あなたが重点を置きたいスキルは何でしょうか?画面に表示されたせりふや字幕を多く使うゲームもあれば、他のゲーマーとのコミュニケーションが必要なゲームもあるため、向上させたいスキルに合ったゲームを探してみてください。

また、学習に使うゲームを選ぶ際には、次の点も考慮しましょう。

  • ダイアログはどのように表示されるか?初級の学習者は、自分のペースで読めるように、ダイアログをクリックすると次に遷移するタイプのゲーム(ポケモンなど)を選ぶとよいでしょう。上級の学習者ならば、実際の会話に近い機能があるものでリスニング練習をしても大丈夫です!ただしこのタイプは、会話がすぐに終わってしまいやり直しが効かないことがあるため、ストーリーに関する重要な情報を聞き逃してしまう可能性があります。その点にはくれぐれもご注意を!
  • 練習したい言語は何か?新しいゲームを選ぶときは、デベロッパーも検討材料としましょう。大手デベロッパーから出ている人気ゲームなら、きちんとした字幕や、さらには吹き替えがあるかもしれません。また、ヨーロッパの会社のものなら複数の欧州言語をサポートを提供している可能性が高く、ドイツ語など欧州言語に興味がある人におすすめです。そして日本語学習者にとっては、日本のロールプレイングゲーム(JRPG)はまさに教材の宝庫。特に「ペルソナ5」はせりふが多く、練習に最適です!
  • 学習中の言語をゲームプレイに使いたいか?ゲームをプレーしながらその言語でリアルタイムで交流したいのか(例えば「World of Warcraft(ワールド・オブ・ウォークラフト」)、それとも交流は主にゲーム空間の外で行い、オフ会などで人と会って語り合いたいのか(例えば「Call of Duty(コール・オブ・デューティ)」)を考えてみましょう。

語学初級者へのおすすめは...

他のプレーヤーと交流する前に、新しい言語でのプレーに慣れるため、シングルプレイヤーのゲームから始めましょう。まずは「The Sims(ザ・シムズ)」を試してみてください。特に、日常的な物事や状況に関する語彙を増やすのにぴったりです。そしてシムたちはしゃべらないため、テキストベースのやりとりを自分のペースで行うことができます!また、「Tycoon Simulator(タイクーン・シミュレーション)」のような建設や経営のシミュレーターも、語彙力強化に役立ちます。ちょっと系統の違うものでは、ミステリアスな物語がひっそりと展開する「The Stanley Parable(スタンレー・パラブル)」があります。ナレーターがあなたが何をしているか、次に何をすべきか、何をしてはいけないかをひたすら教えてくれ、そして指示に従おうが従うまいが、ナレーションが続くのです...。

少し自信がついたら...

ナラティブ系のゲームがぴったりだと思います!この種のゲームは、目にも耳にも大量の文脈を提供してくれるので、その言語を理解し強化する良い練習になります。物語性のあるゲームはまさに「言語」によって成り立っているため、中には高度な言語理解力がないとゲームプレイに参加しきれないものもあります。とはいえ「そこそこわかれば大丈夫」なものもありますからご安心を。ちなみに私たちのお気に入りは、「Dear Esther(ディア・エスター)」と「The Vanishing of Ethan Carter(バニシング・オブ・イーサン・カーター)」です。

かなりの上級者なら...

語彙や言い回しがふんだんに学べるおすすめのゲームがあります!「Disco Elysium(ディスコ・エリジウム)」は、ダークなテーマでも大丈夫な人ならば最高の教材です。というのも、この作品の言語表現は非常に豊かで、しかもほとんどの部分をプレイヤーのペースで読み進めることができるからです。物語にも臨場感があふれており、テーブルトークRPG(TTRPG)のデジタル版に近い印象があります。

どんどん冒険したい人は、これ!

コンソールのシステム言語を変更すると、一部のゲームのプレイ言語も変更できます! ただし、この手順を実行する前に、この段階に移る準備ができているかどうか確認してください。ゲームだけでなく、コンソールのメニューも新しい言語で操作できるようにしてもいいですね。念のため、元の言語に戻す方法もちゃんと調べておきましょう😅 ただしこのやり方では、すべてのゲームのプレイ言語を切り替えられるわけではありません。ゲームのサポート言語は、製品やそのバージョンの仕様によって決まっています。

例えば、私(筆者)は海外で購入したNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)を持っており、システム言語を英語からドイツ語に変更すると「Skyrim(スカイリム)」と「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」をドイツ語でプレイできます。しかし、システム言語を日本語にしてみても、これらゲームは日本語版になりませんでした。

趣味は学習の強い味方!

語学学習に趣味や興味を取り入れることは、モチベーションを維持し、意識せずに語学の練習を続けるのに最適な方法です。そしてゲーマーのあなたはすでに学習上のアドバンテージを持っている。このことをぜひ思い出してください!

言語や学習に関するご質問は、dearduolingo@duolingo.comまでメールでお問い合わせください。