「Duolingoへの質問」へようこそ。このコラムでは言語学習者へのアドバイスをご紹介します。過去の記事はこちらをご覧ください。

明けましておめでとうございます!さて、今年の目標は決まりましたか?もし「語学を学ぶ」ことであるなら、今週の質問は役に立つかもしれませんよ!

今週の質問

Duolingoに質問です。  今年末にメキシコに行く前に、一緒にスペイン語を学ぼうと友人を説得したいのですが、その人は、これまで一度も外国語を学んだことがありません。そういう場合、勉強はかなり大変になりますか?また、学習を始める前に知っておいたほうがいいことはありますか?   グラシアス! 語学101より

初めて勉強する方にとって外国語は、きっと驚きに満ちていることでしょう!一方、学習歴の長い人の場合、外国語がどれほど異なるものであるかを忘れてしまい、単に新しい単語を仕入れれば済むと考えてしまうこともあります。何カ国か言語を学ぶと、言語間に存在するさまざまな違いを予測する能力が脳に備わってきます。

今回の回答では、語学学習の初心者が気を付けるべきことを説明します!

「言語」は、単語の組み合わせではない

新しい言語を学ぶ際には、「言語」を構成する沢山の要素を学ぶことになります。

  • 音:新しい言語の音をどのように発音し、聞き取るか。脳が音を分類する方法を再教育する必要があります!
  • 語彙:さまざまな意味を表現するには、特に名詞、形容詞、動詞が重要です。
  • 文法:学んだ語彙をどう組み合わせるか、単語と単語をつなぐ言葉、動詞の活用など。
  • 会話のルール:状況や目的に応じて、音、語彙、文法を適切に使う方法。

そして、「読む」「書く」「話す」「聞く」の4スキルに取り組みます。大人の学習者の場合、学ぶにつれて得意なものと不得意なものがあることに気が付くことでしょう。習得のペースは人によって違うのが普通だからです!

「翻訳」 は万能ではない

あなたが学んでいる言語を母語に翻訳してみると、ときには意味が正確に「一致」しないことに気づくことがあるかもしれません。単語をひとつひとつ翻訳するのではなく、短い表現や文章によってアイデアやコンセプトを翻訳する方が、意味を把握しやすくなります。

たとえば、スペイン語で「私はお腹が空いた」と言う場合、「私」「お腹」「空いた」を一つひとつ置き換えるのはNGです。これらの単語はすべてスペイン語に存在しますが、それを順番に並べても、お腹が空いていることを表現することはできません。その代わりに、スペイン語では「Tengo hambre(私は飢えを持っている)」と表現します。

なぜスペイン語では素直に「お腹が空いた」と言わないのか、と不思議に思うかもしれませんが、スペイン語を話す人にとっては、なぜ日本語では「飢えを持っている」と言わないのかが不思議なはずです!🤷‍♀️ どちらの言語が「正しい」とか、より論理的であるとか、そういう問題ではありません。世界中の言語を見渡してみると、ひとつの事柄を表現する方法が、無数に存在するというだけなのです。

意味は必ずしも1対1ではない

ルーツを同じくする言語どうしを比較したとしても、単語の意味が1対1に対応しないことはよくあります。ある外国語の単語2つ(あるいはそれ以上)分の意味が、あなたの言語では1つの単語でカバーされていたり、逆にあなたの言語では2つの単語に分かれている概念が、ある外国語では1つの単語で言い表されたりします!

たとえば、スペイン語フランス語イタリア語などのロマンス諸語では、「知っている」に相当する言葉が複数あります。事実や情報を知っているときの「知る」と、人や場所を知っているときの「知る」では、動詞が異なるのです。日本語話者にとっては何とも奇妙な区別に感じることでしょう...しかし、ロマンス語の話者にしてみれば、日本語がその違いを無視して1つの単語で済ませることのほうが奇妙だと感じるはずです!

言語 情報について「知っている」 人や場所を「知っている」
スペイン語 saber conocer
フランス語 savoir connaître
イタリア語 sapere conoscere

前置詞は特に言語間で不一致が生じやすいので、頭痛の種になりがちです(しかも日本語には前置詞がなく助詞がその機能を果たします)。また、言葉には「直接言葉では表現されていない意味」がつきもので、同じ意味を持つ単語どうしを比べたとしても、その単語から連想するイメージや比喩的な使い方、丁寧に聞こえるか、乱暴に聞こえるか、子供っぽく聞こえるかなど、言語によって微妙な違いがあるものです。そして色の見え方すら、言語によって違いがあります

文法は千差万別

外国語の文法を学ぶ前に、びっくりしないように覚えておきたいことを、いくつかご紹介しましょう!

  • 語順:どのような順序で単語を並べるかについての規則も、言語によって全く異なります。そのため文章を他の言語に翻訳すると、単語の並び方が完全に変わってしまうことがあります!
  • 活用:単語の一部が文中の他の部分に合わせて変化することを「活用」と言います。英語のならば動詞が「I walk」「she walks」のように活用しますが、他の言語では他にも、文法上の性(女性、中性、男性)、数(単数、複数、不可算)、文中で置かれた位置、名詞が指すものの種類(動物なのか、体の一部なのか、無生物なのか)などによって、1つの単語が何種類にもマイナーチェンジするものがあります!
  • 単語の変化が起こる位置:「接頭辞」や「接尾辞」という言葉を聞いたことはありますか?「接頭辞」は単語の頭に、「接尾辞」は単語のお尻にくっついて、特定の意味を付加する短い文字列のことです。たとえば「restart(再起動する)」の「re-」は接頭辞にあたり、「接尾辞」は多くの欧州言語で活用のために使われますが、それ以外にも変化が起こりうる場所はたくさんあります!単語の真ん中に付く「接中辞」や、単語の最初と最後につく「接周辞」などというものまで存在します。
  • 一見意味のないつなぎの言葉:ある言い回しの中で、文法的には必要だけれども明確な訳語がない単語や、熟語の一部だがそれ単体では特に意味をもたないような単語に出くわすことがあります。その場合は「文法上必要!」と割り切り、セットで覚えましょう。たとえば電話をかけた時によく言われるのが「Hold on, please(少々お待ちください)」という決まり文句ですが、「この『on』はどういう意味?」と考える学習者も多いはず。ここでの「on」は句動詞(熟語)の一部であり、明確な意味を持たないのですが、だからといって省略して「hold」だけにしてしまうと「お待ちください」の意味にはならないのです。この種の単語については、考えすぎたり、無理に理由を探そうとしないほうが賢明です。

語学は世界への扉!

語学学習は、あなたが会いたい人々や文化とつながる手段であり、また、自分の脳への楽しい挑戦でもあります!学習の旅を始めたあなたがこれからどんな景色を見ていくのか、その一部でもお伝えできたのならば、とてもうれしいです!

言語や学習に関するご質問は、dearduolingo@duolingo.comまでメールでお問い合わせください。