「Duolingoへの質問」へようこそ。このコラムでは言語学習者へのアドバイスを紹介します。過去の記事はこちらをご覧ください。

みなさん、こんにちは!私はエリザベス・ストロングと申します。今回が初めての「Dear Duolingo」コラムとなります。元フランス語教師で、アイルランド語イタリア語を含む多くの言語を学んできました。そして、語学の中でも特に、スペル文字体系に強い興味を持っています。だからこそ、今週の質問に回答する機会をいただけて、本当にうれしいです!

今週の質問

デュオリンゴへの質問の手紙のイラスト。Duolingoに質問です。世界には、どのくらいの文字体系が存在しますか?そしてそれぞれの特徴は?漢字、アラビア文字、ギリシャ文字など、例を挙げて説明してもらえますか?よろしくお願いいたします。「弘法も筆の誤り」より

言語をどのように書き表すか、つまり「文字体系」には、それぞれの特徴があり、大きく異なります。どの文字体系にも「重視する情報」と「重視しない情報」があり、特定の情報を細かく捉える一方で、他の情報は省略しています。と言われてもピンとこないかもしれませんが、大丈夫。今から世界中で使われている様々な文字体系について、詳しく見ていきましょう!

文字体系とは?

私たちが「文字体系」について話すとき、通常は「文字」を指しています。つまり、言葉の音や意味、あるいは手話などの視覚記号を、記号として書き表す方法です。たとえば、今あなたが読んでいるこの文章では、ひらがな、カタカナ、漢字という三つの文字体系が使われています。一方、複数の言語が同じ文字体系を使っている場合もあり、そのバリエーションとして、追加の記号や符号といった適応形を使うこともあります。意外かもしれませんが、英語、スペイン語、ドイツ語、ウェールズ語、ポーランド語、タガログ語、ベトナム語はすべて、「ラテン文字」という文字体系を採用しています!

また、「文字体系」という用語は、単に文字を指すだけでなく、文字と正書法の組み合わせを指すことがあります。正書法とは、その文字体系で使われている記号が何を表すか、またそれらをどのように組み合わせるべきかというルールを指します。

💡
文字体系とは言語を記号として書き表す方法であり、その正書法とは、記号を正しく記すための規則です。

たとえば、英語、スペイン語、ドイツ語ではいずれも「j」という文字を使用しますが、それぞれの正書法(各文字を使用できる場所や各文字によって表される音に関する決まり事)は異なります。英語では、この文字は通常「judge [ジャッジ]」という単語の頭の音を表します。スペイン語では、英語話者が通常「h [ハッ]」音と呼ぶ音を発し、ドイツ語では英語話者が通常「y [イ]」音と呼ぶ音を発します。

また「文字体系」という用語は、活字体や筆記体といった異なる書体や、Comic SansやTimes New Romanといったフォントのことを指すこともあります。これらはむしろデザイン用語なので今回は取り扱わず、言語学的な「文字体系」に焦点を当てていきます!

文字体系を区別する要素

文字体系で使う文字には、英語で「Letter」と呼ばれるものと「Character」と呼ばれるものがあります。「Letter」という用語は、英語のような「各文字が音を表す」言語で用いられ、一方「Character」は、文字自体が意味を表す中国語のような言語で用いられています(日本語の漢字もこれに相当します)。

言語によっては「Letter」と「Character」の境界があいまいなものもあり、実は日本語がその好例です。日本人は知らず知らずのうちに3種類の文字体系を使い分け、そのいずれにおいても、各々の記号を「文字」という名前で呼んでいます。

  • 漢字:意味を表す文字なので「Character」に相当。
  • ひらがな:音を表す文字なので「Letter」に近い概念。
  • カタカナ:音を表す文字なので「Letter」に近い概念。

一部の文字体系には発音区別符号やアクセント記号が存在します。これは文字や記号に付加される点やダッシュなどの記号です。発音区別符号やアクセント記号は特定の音や意味を表すのではなく、その文字や記号についての情報を読者に伝えます。たとえばスペイン語では、ほとんどのアクセント記号は単語のどの部分に強勢があるかを示します(したがって「él habló(彼は話した)」では「o」に強勢が置かれます)。一方フランス語では、文字の発音を指定します(「é」ならば口をすぼめた[エ]になり、「è」ならば口を大きめに開けた[エ]になります)。

世界の6種類の文字体系

数千年の歴史の中で、言語を記述するために様々な文字体系が生まれてきました。現在でも使用されているものもあれば、過去の遺物となってしまったものもあります。この記事の最後に、最も広く認知されている文字体系の一覧と、各文字体系を使用する言語の例をまとめました。

これらの文字体系は、その文字や記号が何を表すかに基づいて、次の6つのカテゴリーに分類できると考えられます。

1. 特徴文字

「特徴文字」は、子音、母音、音節、意味以外の言語の側面を表す文字です。

たとえば韓国語はハングルを使用しますが、これは口の中で音が発生させる位置に基づいてデザインされています。記号「ᄀ」は単語内の位置によってわずかに異なる音となる場合があるものの、基本的には口の後方で発音する音を表します。

手話表記法も特徴文字の一例で、手話言語における手の形、動き、手と腕の位置、顔の特徴を表します。

2. アブジャド

アブジャドと呼ばれる文字体系では、伝統的に、言語の子音のみを独立した記号として表します。つまり、一部の言語では、母音を全く書く必要がないということです!これを読む人は、文脈から単語内の母音の位置を推測しなければなりません。またこれらの文字体系では、母音をオプションとして追加する手段として発音記号(基本文字に付加される小記号)を用いるものもあります。

ヘブライ語はアブジャドを使用する言語としてよく知られています。「本」を意味する単語には、2通りの書き方が存在します(ちなみに、右から左に読みます!)。

  • 発音記号なし: ספר(アルファベットに置き換えたとしたら「s f r」)
  • 発音記号あり: סֵפֶר (アルファベットに置き換えたとしたら「se fe r」)

ヘブライ文字を使用するイディッシュ語、アラビア文字を使用するアラビア語も、アブジャドの一種です。

3. アルファベット

普段何となく使っている「アルファベット」という用語は、実は、子音と母音を別々の記号として表す文字体系を指します。

ラテン文字、ギリシャ文字、キリル文字はいずれもアルファベットで、見た目こそ違うものの、その仕組みは同じです。つまり、各記号が音を表し、そこから記号が組み合わさってできた単語の発音がわかるようになっています。(ただし言語は常に変化を続けるため、現代では記号と音の対応関係がかなり乱れてしまっているものもあります。そう、英語のスペルがその典型です!) 

以下に、3種類のアルファベットの形を比較してみました。

ラテン文字 ギリシャ文字 キリル文字
A a Α α А а
B b Β β Б б
D d Δ δ Д д

英語のアルファベットはラテン文字にあたり、英語をこれから始める人は、英語の各文字の発音方法と、英語の綴りの規則を学ぶことになるでしょう。

4. アブギダ

アブギダと呼ばれる文字体系は、1つの記号が音節(子音と母音の組み合わせ)を表します。

たとえば、ヒンディー語で使用される文字であるデーヴァナーガリーはアブギダの一種です。同じ子音で始まる文字は通常、見た目が似ています。以下は「k」の音で始まる音節文字の例です。

  •  क (ka)
  •  कि (ki)
  •  कु (ku)
  •  के (ke)
  •  कॊ (ko)

5. 音節文字

音節文字もまた、1つの記号が音節を表します。しかし音節文字では、たとえ同じ音を内包する音節どうしでも、見た目がバラバラです。

日本語のひらがながその代表例で、たとえば「か」行のひらがなは常にローマ字の「k」で始まるという共通点がありますが、これらの見た目はまったく違います。

  • か (ka) 
  • き (ki)
  • く (ku)
  • け (ke)
  • こ (ko)

6. 表語文字

表語文字では、各文字は、1つの単語(またはより小さな意味単位)を表します。

漢字は表意文字の一種です。各文字にはそれぞれの意味があり、この意味は、他の文字と組み合わされた場合でもおおむね維持されます(または、変わったように見えても裏で生きています)。たとえば中国語では

  • 你 (nǐ) :あなた
  • 好 (hǎo) :元気
  • 你好 (nǐ hǎo) :「あなた元気?」=「こんにちは」

となります。

時に、ある漢字の発音が他の漢字との組み合わせによって異なることがありますが、その一般的な意味は変わりません。

翻字についての注記

翻字(Transliteration)とは、ある文字体系で書かれるべき単語や記号の発音を、別の文字体系の慣習に従って表記することを指します。たとえば、上の各文字体系の紹介ではヒンディー語、日本語、中国語の記号の横に括弧で発音を示しました。これらは、外国語の発音をラテン文字で表した翻字です。このように、特定のアルファベット(この場合はラテン文字)に翻字することを、専門用語では「ローマ字化(Romanization)」と呼びます。

一部の言語には比較的標準的な翻字のルールが存在しますが、異なる時期に様々な人々によって開発された複数のルールが存在する言語もあります。日本語のローマ字に「ヘボン式」と「訓令式」があるのは、そのような経緯によるものです。

書き方次第で世界の見方が変わる

言語を書き表す文字体系からは、様々な言語を話す人々が、どのように違った切り口から世界を見ているのかをうかがい知ることができます。皆さんも、この楽しみをぜひ味わってみてください!

言語や文字体系に関する対するご質問は、dearduolingo@duolingo.comまでメールでお問い合わせください。


世界のその他の主要な文字体系

なお、ここに記載されている言語の一部は、他の文字体系でも表記される場合があります。

文字体系 種類 この文字体系を使う言語の例
アラビア文字 アブジャド アラビア語、ペルシア語(派生形)、ウルドゥー語(派生形)
アラム文字 アブジャド アラム語
アルメニア文字 アルファベット アルメニア語
バリ文字 アブギダ オーストロネシア語族のバリ語、古ジャワ語、サンスクリット語
ベンガル(バングラ)文字 アブギダ ベンガル(バングラ)語
ビルマ文字 アブギダ ビルマ語、パーリ語
カナダ音節文字 アブギダ(ただし、音節文字に分類されることもある) クリー語、イヌクティトゥット語、オジブウェー語
チェロキー 音節文字 チェロキー語
コプト文字 アルファベット コプト語
楔形文字 表語文字 アッカド語、エラム語、ヒッタイト語、古代ペルシア語、シュメール語
ディテマ・ツァ・ディノコ文字 特徴文字 セソト語、セツワナ語
ガライ文字 アルファベット ウォロフ語
ゴート文字 アルファベット ゴート語
五大湖アルゴンキン諸語の文字体系 音節文字 オジブウェー語、ポタワトミ語
グジャラート文字 アブギダ グジャラート語、クッチ語
グルムキー文字 アブギダ パンジャーブ語
ヒエログリフ 表語文字 古代エジプト語
ジャワ文字 アブギダ ジャワ語、サンスクリット語、スンダ語
クメール文字 アブギダ クメール語、パーリ語、サンスクリット語
ラオ文字 アブギダ イサーン語、ラオ語
マラヤーラム文字 アブギダ ジェセリ語、マラヤーラム語、トゥル語
マヤ文字 表語文字 古代チョルティ語、古代ユカテク・マヤ語
モンゴル文字 アルファベット モンゴル語
オガム文字 アルファベット 古アイルランド語
オセージ文字 アルファベット オセージ語
フェニキア文字 アブジャド アンモン語、エドム語、モアブ語、フェニキア語、ポエニ語
ルーン文字 アルファベット 古英語、古ノルド語
シャームキー文字 アブジャド パンジャーブ語
シンハラ文字 アブギダ パーリ語、サンスクリット語、シンハラ語
タミル文字 アブギダ バダガ語、イルラ語、パニヤ語、サウラーシュトラ語、タミル語
テルグ文字 アブギダ テルグ語(場合によってはゴーンディー語、サンスクリット語にも使用)
タイ文字 アブギダ 南タイ語、タイ語
チベット文字 アブギダ バルティ語、ゾンカ語、サンスクリット語、シェルパ語、チベット語