本気でチェスに挑むなら、対戦記録のつけ方もマスターすべし!記譜は、公式戦で義務付けられているだけでなく、対局を振り返って研究するのにも大活躍します。

それでは、チェスの記譜法の仕組みをまるごと解説していきます!


目次

チェスの記譜法って?

チェスの記譜法は、対局の進行を記録する世界共通の方法です。記譜法は時代と共に変化しており、かつては「記述式記譜法」というものが主流でした。しかし現在、世界中で最もよく使われている方法は「代数式記譜法」というもの。この記事ではこちらを詳しく解説していきます!

チェスの記譜法を、読んでみよう!書いてみよう!

代数式記譜法では、駒をアルファベット一文字で表します。ポーンだけは例外で、アルファベットは省略し、移動先のマスだけを記録します。これは、キングやクイーン、ルーク、ナイト、ビショップなどといった後ろの列に並ぶ主要な駒(大駒・小駒)とは違い、ポーンは別格として扱われるからです。

記録するときは、「駒のアルファベット」 + 「移動先のマスの名前」の順で書きます。白の番+黒の番を、セットで1手とし、手数の番号(1手目なら「1.」、2手目なら「2.」…)に続けて、二人の動きを同じ行に横並びで記録していきます。

チェス盤のマス目の表し方
チェス盤のマス目は、すべて「座標」を使って表します。縦の列(ファイル)はa〜hのアルファベット、横の行(ランク)は1〜8の数字となっており、この2つを組み合わせてすべてのマスの場所を特定します。

白と黒、どちらのプレイヤーが記録をつけるときでも、座標は常に「白の視点」が基準になります。白から見て、「左から右へa、b、c…列(ファイル)」、「下から上へ1、2、3…行(ランク)」と数えていくので、黒の視点から見ると「一番左がh列目、一番下が8行目」という風に、逆さまになります。盤をどっちから見ていても、マス目の名前は白が基準となるからです。


すべての駒が初期配置に並んだチェス盤のイラスト。 縦の列(ファイル)は下側に左から右へ「a〜h」、横の行(ランク)は左側に下から上へ「1〜8」のラベルが付いている。一番下の「1」の行には白の駒、一番上の「8」の行には黒の駒が配置されている。

それぞれの駒の表し方はこちら。


駒の名前 略称 指し手の例
キング K Kf1
クイーン Q Qa5
ルーク R Re1
ビショップ B Bb5
ナイト N Nf6
ポーン なし d4

それでは、上の表の「指し手の例」を、チェス盤のイラストで見てみましょう!


黒の駒が3個、白の駒が3個配置されたチェス盤のイラスト。黒の駒は、クイーンがa5、ビショップがb5、ナイトがf6のマスにある。白の駒は、キングがf1、ルークがe1、ポーンがd4のマスに配置されている。

特殊な動きを表す記号

相手の駒を取るときや、キャスリング、ポーンの昇格(プロモーション)、アンパッサンなどといった特殊な動きには、それぞれ専用の記録方法があります。

相手の駒を取るとき
相手の駒を取るときは、記号「x」を使います。書き方は「駒の略称」+「x」+「移動先のマス」の順です。例えば、f3にいるナイトがe5にある駒を取る場合は「Nxe5」と記録します。


2つのチェス盤が左右に並んだイラスト。左側の盤面には、白のナイトがf3から移動してe5にある黒のポーンを取る動きが矢印で示されている。右側の盤面にはその結果が示されており、黒のポーンがあったe5のマスに白のナイトが移動している。

ポーンが相手の駒を取るときは、「ポーンが元いたファイル(列)」+「x」+「移動先のマスの名前」の順で書きます。例えば、b3にいるポーンがc4の駒を取る場合は「bxc4」と記録します。


2つのチェス盤が左右に並んだイラスト。左側の盤面には、白のポーンがb3からc4へ移動し、c4にある黒のポーンを取る動きが矢印で示されている。右側の盤面にはその結果が示されており、黒のポーンがあったc4のマスに白のポーンが移動している。

駒を表すアルファベットは大文字で書くことが重要です。なぜなら、「Bxc4」は「ビショップがc4の駒を取ったこと」を表しますが、小文字で「bxc4」と書いてしまうと「b列のポーンがc4の駒を取ったこと」になってしまうからです。


2つのチェス盤が左右に並んだイラスト。左側の盤面には、白のビショップがf1からc4へ移動して、c4にある黒のポーンを取る動きが矢印で示されている。右側の盤面にはその結果が示されており、黒のポーンがあったc4のマスに白のビショップが移動している。

キャスリング
キングサイドへキャスリングする場合は、白黒どちらの番であっても「0-0」と書きます。一方、クイーンサイドへキャスリングする場合は、同じくどちらの番でも「0-0-0」と書きます。この「0」の数は、ルークが移動したマスの数です。キングサイド・キャスリングでは、ルークは2マスしか動かないのでゼロが2つ(0-0)。クイーンサイド・キャスリングでは、ルークが3マス動くのでゼロが3つ(0-0-0)になるのですね。

例えば、10手目で白がキングサイド・キャスリングし、続けて黒がすぐにクイーンサイド・キャスリングした場合、「10. 0-0 0-0-0」と記録します。ゼロが多くて目が回りそうですね!


3つのチェス盤が横に並んだイラスト。1つ目の盤面(左)には、白のキングがキングサイド・キャスリングする動き(キングがe1からg1へ移動し、ルークがf1へ移動する)が2本の矢印で示されている。2つ目の盤面(中央)には白のキャスリング完了後の状態が示されており、続けて黒のキングがクイーンサイド・キャスリングする動き(キングがe8からc8へ移動し、ルークがd8へ移動する)が2本の矢印で示されている。3つ目の盤面(右)には、黒のキャスリングも完了した最終的な状態が示されている。

ポーンのプロモーション(昇格)
ポーンがプロモーション(昇格)する場合は、記号「=」を使います。書き方は「移動先のマスの名前」+「=」+「昇格した駒の略称」の順番です。例えば、白がeファイルのポーンをクイーンに昇格させた場合、記録は「e8=Q」となります。


2つのチェス盤が左右に並んだイラスト。左側の盤面には、白のポーンがe7から一番奥のe8へと移動する動きが矢印で示されている。右側の盤面にはその結果が示されており、e8に到達した白のポーンがクイーンへとプロモーション(昇格)している。

同じように、もし黒がbファイルのポーンをナイトに昇格させた場合は、「b1=N」と記録します。


2つのチェス盤が左右に並んだイラスト。左側の盤面には、黒のポーンがb2からb1へと移動する動きが矢印で示されている。右側の盤面にはその結果が示されており、b1に到達した黒のポーンがナイトへとプロモーション(昇格)している。

さらに、相手の駒を取りながらプロモーションする場合は、「ポーンが元いたファイル(列)」+「x」+「移動先のマスの名前」+「=」+「昇格後の駒の略称」の順で書きます。例えば、bファイルにいたポーンがc8にある相手の駒を取り、同時にクイーンに昇格した場合、記録は「bxc8=Q」となります。


2つのチェス盤が左右に並んだイラスト。左側の盤面には、白のポーンがb7からc8へ移動し、そこにある黒のナイトを取る動きが矢印で示されている。右側の盤面にはその結果が示されており、黒のナイトを取った白のポーンが、クイーンへとプロモーション(昇格)している。

アンパッサン
アンパッサンで駒を取る場合は、末尾に 「e.p.」(en passantの略)と書いても良いですが、省略しても大丈夫です。例えば、b5にいる白のポーンが、a5にある黒のポーンをアンパッサンで取ったとします。このとき、記録は「bxa6 e.p.」と書くこともできますが、「bxa6」だけでもOKです。経験のあるプレイヤーならそれだけでアンパッサンだとすぐに分かるからです。


2つのチェス盤が左右に並んだイラスト。左側の盤面には、白のポーンがb5からa6へと移動し、a5にある黒のポーンをアンパッサンで取る動きが矢印で示されている。右側の盤面にはその結果が示されており、黒のポーンが盤上から取り除かれ、白のポーンがa6のマスに移動している。

その他の記号

チェック
チェックがかかったときは 「+」を書くこともできますが、こちらも省略可能です。例えば、クイーンがd7のマスに移動してチェックをかけた場合、記録は「Qd7+」となります。


2つのチェス盤が左右に並んだイラスト。左側の盤面には、白のクイーンがd6からd7へと移動し、f7にいる黒のキングにチェックをかける動きが矢印で示されている。右側の盤面にはその結果が示されており、白のクイーンがd7のマスに移動している

チェックメイト
チェックメイトが成立したときは「#」と書いても良いですが、こちらも省略して大丈夫。例えば、ルークがh8のマスに移動してチェックメイトを決めた場合、記録は「Rh8#」となります。


2つのチェス盤が左右に並んだイラスト。左側の盤面には、白のルークがh6からh8へと移動し、チェックメイトを決める動きが矢印で示されている。右側の盤面にはその結果が示されており、チェックメイトが成立した最終的な盤面になっている。

指し手の評価を表す記号
好手や、面白い手、先行き不明瞭な手、悪手など、指し手の評価を以下のように表すこともできます。

  • ! :好手(優れた手、意外な一手)。「!!」 は、妙手(非常に優れた手)。
  • ? :疑問手、または悪手。「??」 は、ブランダー(大悪手)。
  • ?! :面白い手(疑問手気味だが、対応や評価が別れる興味深い手)。
  • !? :一見面白いが、じっくり分析してみるとそれほど良くない手。

評価記号は、記録に必須のものではありません。基本的には、ゲームが終わった後に対局を振り返って分析するときに書き加えるものです。これがあると、どこが勝負の分かれ目だったのかがひと目で分かるので便利ですね。

チェスの記録はいつ使うの?

公式レーティングのあるチェス大会に参加する場合、基本的にはすべての指し手を「代数式表記法」で記録することが義務づけられています。世界トップのグランドマスターたちでも、国際チェス連盟(FIDE)のルールに従って、自分の手をすべて紙に記録するのです!

最近では、ほとんどのオンラインチェスサイトが対局を自動的に記録し、これまでのゲームをすべて保存してくれます。

しかし、普段から対面(OTB)チェスをする時でも、ゲームを記録、保存しておくのがおすすめ。記録は上達にとても役立ちます。また、後から「チェスエンジン(局面を分析し、その場の最適な手を計算するコンピュータプログラム)」に読み込ませ、ブランダーやチャンスを見逃していたポイントを見つけることもできます。最速で実力を上げるためにも、自分の弱点を把握しておくことは素晴らしい戦略です。しっかり記録をつけて、チェスの実力指標である「イロレーティング(Elo Rating)」の階段を駆け上っていきましょう!

さあ、早速記録をつけてみよう!

チェスの記譜法は、プレイヤーならぜひ身につけておきたい便利なスキル。公式の舞台で戦うときにも、実力を伸ばすためにも使える実用的なツールです。もし、本気でチェスに挑むなら、この記譜法をマスターして対戦記録を残していきましょう!